・北極犬2019/01/17 09:47

この犬を選んだのは顔がとても可愛かったのと、村一番の美犬であったことである。
     北極犬
朝方、テントの外で排泄行為をすることにした。ズボンを下げてお尻をペロンと出し、早速しゃがんで行為に取りかかろうとした。
ふと背後を見やると、犬が可愛い顔をこちらに向け、妙に熱っぽい視線を私の臀部に投げかけていた。はは~んと私はピンときた。ウンコを食いたいんだな。犬は基本的に人糞が大好物である。
今回の冒険では犬の食料のドッグフードは用意していたが、白クマに食べられ毎日の分量を少なくせざるを得なかった。犬は足りなかったのである。
この日、犬の目の前で排泄したら、犬は一体どんな反応を示すのか見てみたかった。ところがその時、予想もしなかったことが起きた。犬が突然、私の背後に近づいたかと思うと、まだ完全にブツを出し切っていない私の肛門に鼻面を近づけ、もうたまらないといった様子で穴から出てくる糞をばくばくと食いだしたのだ。しかも、あろうことか私の菊門を慈愛に満ちたテクニカルな舌技でペロペロと舐めだしたのである。「おい、止めろ!」と手で追っ払った。

以上が、ノンフィクション本大賞の「極夜行」(角幡唯介) の一部抜粋である。この人はいずれ「植村直己冒険賞」を取るのではなかろうか。

北極圏の極夜と冒険とはどのような事かを少し学習してみた。

極夜とは太陽が3か月も4か月も、半年も出ない所で、天候が良ければ月は眺められるようだ。通常は真っ暗闇でヘッドランプで行動する。
今回の出発地はグリーンランドで、世界最北のシオラパルクという人口68人の村、北緯77度。

         世界最北の村シオラパルク 
 
ここはイヌイットという先住民族のエスキモーで、猟師で生計を立てている世界最北の村でもある。

                   イヌイットの住民
              北緯79度
   
冒険はこの村から北緯79度まで、人間はだれも住んでいないまさに辺境の地である。ここ以上は北極の北緯90度で地球の最果てである。

この冒険者は単独、連れは北極犬だけであり、80日間をかけて死線をさまよいながらソリを引いての生還物語である。何事かをなす人たちは一様に文章が面白い。息もつかせぬ迫力である。
      ソリを引く北極犬

食料を白クマに奪われ、止む無く生きるために仕留めた北極の動物は、
海象(セイウチ)体重1200kg、
                         セイウチ
海豹(アザラシ)、
      アザラシ

麝香牛(ジャコウウシ)230cm、
             ジャコウウシ

ホッキョクオオカミ、
                        ホッキョクオオカミ  
ホッキョクギツネ、
 ホッキョクギツネ

ホッキョクウサギだが、
            ホッキョクウサギ

都合良く現れず最悪は連れの北極犬を食べるしかないと・・・はたして結末は!
犬は白クマ対策の番犬とソリ引きの為であり体重は40kgもある。一方ホッキョクグマはオスで最大250cm、体重600kgもあり、襲われたらこの世の終わり、ライフルは必需品である。

                       ホッキョクグマ

作者はあとがきで述べている。
「人生には勝負を懸けた旅をしなければならないときがある」。

この言葉を目にした時思い出す登山家がいる。医師である。その一説。
「エベレスト登頂の隊長から、あなたにも登頂のチャンスがあるよと。まさか、私が8,000m峰なんて! しかし、私の心はぐらりときた。そして半日後にはもう参加の決心をしていた。
仕事はどうするか・・・・・やめればいい。人生には逃してはならないものがある。人生というスケールで選択すべきものがある。もちろん自信などない。それまで6,000m峰にさえ登ったことはなく、チョモランマ登頂など私にとっては論外のこと。しかし、私ももう53才、一生に一度は8,000mの壁に挑んでみたい、悔いの残らない人生の終末を、迎えるためにも。こうして1年間に及ぶ訓練浸けの日々が始まったのである。」
この医師は退職し、無事エベレストに登頂できた。10名の登山隊で登頂は3名であった。

この2名は同じことを言っているのである。含蓄のある言葉で折に触れ思い出す言葉である。