・焼き鳥屋 ― 2024/03/30 09:40
昔、苦学生(?)であった頃、仕送りやアルバイトで懐に余裕があると、良く通うトンカツ屋と焼き鳥屋があった。
何の変哲もない、みすぼらしい焼き鳥屋であった。親爺が素朴で奥さんが優しい、実に微笑ましい夫婦であった。学生には、とりわけ優しかった気がした。
貧しいので、焼き鳥は3本のみ。1本100円もしなかったと記憶する。
通しはモヤシ、これが実に美味かった。学生にはサービスだと店主が言う。だからお代わりしたいが気の毒で云えなかった。あの味は今でも忘れられない。
その頃はビールなど高くて飲めなかった。日本酒1本100円を2本まで、〆て500円位か、ウン十年前なので金の単価については記憶が定かでない。
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時代が変わって・・・
先般、どうしても東京に行かなければならない用事が発生した。
夜の食事で東京の友人がご馳走してくれると言ったので遠慮なく従った。今日は「焼き鳥」にするという。まあ~ご馳走になるのだから贅沢は言えないかとひそかに思った。
タクシーで行くと豪華な店先で止まった。
一瞬、料亭の雰囲気である
中は7席しかない。完全予約の貸し切りだという
店内はヒノキの一枚板を使ったカウンターのみ。
さすがに炭は備長炭、前にはタレが入った入れ物が5つばかり、胡椒類もいくつもある。大将のねじり鉢巻きが昔風だ。
さあー乾杯! ビールの次はワイン、左手前にはワイングラスの大きさがひときわ目立つ。ここは「ワインバー」か? と思わせるほどだ。
次から次と出てきた
ここはお任せだという。一人16,000円、飲み物は別と後で聞いて口がアングリ。
箸休めにこれは酢のものか?
最後はデザート
客がもう結構、と言うまで出てくる。
飲み物は、ビール、ワイン、各種日本酒、焼酎、すべて有名銘柄ばかりであった。
友人から、店主である大将談を聞いた。
屋台の食べ物だった焼き鳥が、今では高級レストランで味わうことができるようになったのだという。
六本木の【鳥長】で修行、世界を感じたパリでの経験、日本の文化でもあるYAKITORIをいち早く世界に広めた一人、中目黒に【鳥よし】をオープン。その後、西麻布や銀座に出店。4店のオーナーとなる。
そこで修業した【鳥しき】のオーナーは、大学卒業後、人材派遣会社の営業、仕事が休みの日は焼鳥屋さんを食べ歩くなかで、中目黒の名店【鳥よし】で衝撃を受け、門を叩く。7年間の修業を経て、2007年に【鳥しき】開店。2011年のミシュラン1つ星獲得以降、現在まで星を維持し続けている。
何れも東京では5本の指に入る有名店であるという。
そしてさらに独立した焼き鳥【黒崎】が白金台で開業。7席ほどの店内は、2カ月先まで予約で埋まっているほどで全て貸し切り。値段も一人16,000円。飲み物は別。
3店ともに昔風の焼き鳥店の雰囲気ではなく、和風居酒屋か割烹風である。
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昔懐かし、昭和の頃の焼き鳥屋はどこへ行ったのやら・・・
懐寂しい年金暮らしの身では、スーパーの1本100円チョイの焼き鳥しか食べられないご時世である。トホホッ!
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